財産目録を作成する方へのアドバイス

【 関 連 業 務 】

相続手続き代行業務

戸籍謄本等お取り寄せ代行業務

法定相続情報証明制度申請代行業務

遺言書作成業務

自筆証書遺言保管制度申請サポート業務

 

遺産の調査についての詳細

相続が発生してから故人が残された財産を正確に調査して行くには大変労力が必要です。
官公署等での調査や、個人間の借金等の調査など、大変骨のおれる作業が必要となることがあります。
遺産の調査は多岐に渡るため、調査期間が長引くと各種の手続きに法的期限が付された申告に間に合わず、不利益が発生するおそれがあります。
一番有効なのが、財産を残す本人が生前に財産目録書の作成をしておくことがベストです。
今回は、「財産目録書の作成のポイント」して記事を掲載させていただきましたのでご参考にして下さい。

相続財産の種類

相続財産になるのは、亡くなられた方の名義である以下の財産です。
〇不動産(土地・建物)
〇有価証券等(株式・国債・投資信託・証書等)
〇貴金属等
〇預貯金・現金
〇生命保険金等
※生命保険金等は原則、相続財産に含みませんが、例外として相続財産に含まなくてはならないケースがあります。
〇自動車等
〇事業用資産 ※故人が個人事業主であった場合。

このすべての相続財産を調査し、その価値についても調査が必要になります。

各財産の評価の方法

相続財産の不動産・有価証券等・貴金属・預貯金・現金・生命保険等・自動車・事業用資産等のそれぞれに評価の方法があり、順番にご説明していきます。また、最後に負債(ローン等)の把握方法についてもご説明いたします。

不動産の評価方法

不動産は、土地・建物であり、それぞれ評価方法が異なります。

【土地の評価方法】
注意が必要なのは、「土地」の評価方法
1. 路線価で評価する。
2. 時価で評価する。

2種の評価方法が採用できますが、路線価評価と時価評価を比べると時価評価が高い地域が存在します。家族でどの評価方法を採用するか話合いが必要です。

【建物の評価方法】
固定資産税評価額の金額で評価します。

有価証券・証書等・貴金属等

【株式・国債・投資信託の評価方法】
・本人が亡くなった日の終値
・亡くなった月の終値の平均価格
・その前月、前々月の終値の平均価格
のいずれかのうち、最も安い価格を採用します。

※目録を作成する場合、直近のひと月の平均価格又は、記載日の終値いずれかで記載すれば問題はありません。

【証書等の評価方法】
農協の出資金証書や漁協の出資金証書等の証書があります。証書に記載されている金額を財産目録に記載します。

【貴金属等】
購入価格ではなく、「買取価格」を財産目録書へ記載します。
(注意)自己で判断せず、第三者(買取専門店等)へ評価を依頼し、その根拠(査定書等)を添えておきます。

預貯金・現金

金融機関(銀行)との取引口座の全てを記載します。
預貯金の記載内容は、1.金融機関名2.口座の種類3.口座番号4.預金金額を各銀行ごとに財産目録書へ記載します。
現金は〇年〇月〇日時点の金額と記載します。

生命保険契約

被相続人である故人の死亡時に支払われる生命保険金は、相続財産とはみなされません。
但し、生命保険金が遺産分割の対象になる例外があります。
〇保険金が高額で、他の法定相続人の遺産分割に大きな差が生じる場合。
〇生命保険金の受取人が指定されていない場合。
〇指定されている受取人が死亡していた場合。
は相続財産に含めなくてはなりません。
財産目録書への記載は、・保険会社名・保険の種類・保険証券番号・保険金額・保険会社の連絡先、担当者名を記載しておきましょう。

死亡保険金に相続税がかかるかどうかについては、「生命保険金の非課税限度額」があり、500万円×法定相続人の数で算出し、その金額を保険金額が超えた場合、超えた金額に対して相続税が課税されます。

自動車等

【自家用車の評価方法】
自家用車の評価方法は、
〇中古車市場における業者の買取価格相場
〇査定額
〇売却代金
〇償却費控除額
のいずれかの評価方法方法を採用します。

事業用資産の査定方法

原則として、1個又は1組ごとにその財産をその状態で買うとした場合における価額(調達価額に相当する金額)による。この場合、1個又は1組の価額が5万円以下のものは、一括して評価することができる。(評基通128129

故人が個人事業主であった場合、「事業用資産」も相続税の課税対象となります。
この場合、事業用資産は、動産を「一般動産」(事業者所有の事業の用に供する機械装置、器具、備品、車両運搬具等)と、「たな卸し商品等」に分類して評価します。

一般動産とは
不動産(土地とその定着物)以外をいいます。基本的には物体として形があるものが動産となるので、著作権や特許権といった無体財産権は含まれません。
鉄道の乗車券やコンサートチケット等は流通の為便利であることから動産に含みます。
(注意)
冷暖房設備・昇降装置・昇降設備・電気設備・給排水設備・消火設備・浴槽設備など家屋の付属設備として評価されるものは一般動産に含みません。

たな卸し資産とは
販売目的で仕入れ、まだ販売されていない物(商品)をいい、すなわち在庫のことを指します。製造業等の原材料なども棚卸資産に含まれます。
本棚卸資産も相続財産に含まれるので評価が必要となります。

 

一般動産の評価単位と評価方法

(一般動産の評価単位)

一般動産の価格は、原則として1個または1組ごとに評価します。しかし、家庭用、農業用、旅館用などの動産はその種類と数量が多く、1個又は1組ごとに評価するには煩雑なものとなるので、これらの一般動産で1個又は1組の価格が5万円以下のものについては、それぞれ一括して一世帯・一農家・一旅館等ごとに評価することができます。

(一般動産の評価方法)

原則は「売買実例価格」や「精通者意見価格」を参考にして評価します。但し、売買実例価格・精通者意見価格が明らかでない場合、その動産の製造時から課税時期までの期間の償却費の計算(事業用一般動産)又は、原価の額(非事業用一般動産)を引いた金額で評価します。

その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価格 — 償却費の額の合計額

※製造時から課税時期までの期間の1年未満の端数は切り捨てします。(9カ月→1年とする)
※耐用年数は、耐用年数省令で定められた年数とします。
※償却方法は、「定率法」で計算します。

棚卸資産の評価単位と評価方法

(棚卸資産の評価単位)

棚卸し商品等(商品・原材料・半製品・仕掛品・製品・生産品その他これらに準ずる動産)は、種類及び品質などがおおむね同一のものごとに評価します。

(棚卸資産の評価方法)

相続税法基本通達によれば、棚卸資産のうち、以下の物は個別法を用いて評価額を算出することができます。

①商品の取得から販売に至るまでの過程を通じて具体的に個品管理が行われている場合又は製品・半製品もしくは仕掛品の取得から販売もしくは消費までの過程を通じて具体的に個品管理が行われ、かつ、個別原価計算が実施されている場合において、その個品管理を行うこと又は個別原価計算を実施することに合理性があると認められるときにおけるその商品又は製品、半製品若しくは仕掛品。

②その性質上専ら①の製品又は半製品の製造等の用に供されるものとして保有されている原材料。

これらについては、個別法を用いてその相続税評価額を算出することができます。

〇棚卸商品等の評価額

・商品 →(評価方法)販売価格-適正利潤額-予定経費額-消費税額

・原材料→(評価方法)仕入れ価格+引き取り等の経費額

・半製品及び仕掛品→(評価方法)原材料の仕入額+引き取り等の経費額+加工費等の経費額

・製品及び生産品→(評価方法)販売価格-適正利潤額-予定経費額-消費税額

※但し、個々の価格を算定し難い棚卸商品等の評価は、所得税法又は法人税法に定める方法のうち、その企業が所得の金額の計算上選定している方法によることもできます。

負債の把握方法

故人である被相続人が生前に借り入れた金銭・ローンなどの詳細を財産目録書に記載する理由は、負債が多額に及ぶ場合、相続人が「限定承認」「相続放棄」を考慮できるようにすることです。限定承認・相続放棄は法的期限が定められており期限がすぎてしまうと手続きできなくなります。

生前に目録書に記載することで、相続人が対応を取れる状態を確保することが重要です。

特に相続発生後に判明しにくいことが以下の事項です。

・債務の保証人・連帯保証人であること。
・個人間の借金(借用証書等が無い場合)
・事業等の売掛金や事業ローンなど

生前に本人が債務の存在を目録書に記載しなければ、相続人が負債の存在を知らずに分割協議を進めた場合、遡って無効となったり相続人同士の争いに発展します。

財産目録書へ記載する内容は、・記載日・種類(債務の種類)・借り入れた理由・返済先・金融機関名・借り入れた個人名・返済先の住所・連絡先・借入残額(〇年〇月〇日現在 ○○○○○○円と記入)・借用証書等の保管場所・借用証書の有無を詳細に記載します。

負債に関して情報が無い場合、負債を調査する方法は以下のとおりです。
〇被相続人宅へ郵送される、請求書・督促状などを探す。
〇CIC(クレジット・インフォメーション・センター)に照会手続きをする。
〇JICC(日本信用情報機構)に照会手続きをする。
〇全国銀行個人情報センターに照会手続きをする。

※CIC・JICC・全国銀行個人情報センターに照会を依頼すれば、借入状況・ある程度の連帯保証人になっているかの情報もわかります。

但し、個人間の契約等は故人と契約した相手に問合せる等しない限り判明しません。
やはり言いにくい事ではありますが財産を残される本人が正直に全てを打ち明けていた方が安心です。

(限定承認・相続放棄について)
相続放棄→相続人が、相続の発生を知ったときから3カ月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。
限定承認→相続人が、相続の発生を知ったときから3カ月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。
※限定承認は、結果として財産と借金を比較して借金が多ければ、財産の額を上限として借金を支払って済ますことができる制度です。

(注意点)
以下の行為を行うと、「単純承認」とみなされて相続放棄できなくなります。

被相続人の財産を処分・名義変更・預金口座の凍結解除、預金引出し・遺産分割参加・合意など
また、手続の期限以内に必要書類を集め家庭裁判所へ申立てても、不備を指摘され補正を求められることもあります。この補正に応じないまま時間が経過すると家庭裁判所への申立てが却下されてしまうこととなり、この場合は2度目の申立てができません。債権者や後順位相続人(親戚)へ説明をしなければならない精神的な苦痛を伴うことが多い手続きになります。
相続放棄申述書・被相続人の住民票除票・申立人の戸籍謄本などが必要となりますが、詳しくは家庭裁判所へお問い合わせしてください。
専門家である司法書士・弁護士へご相談することもできます。

(まとめ)

以上、財産目録書を作成する手続きを紹介しました。
ポイントとして、「故人の遺産は何があるか」と「その遺産はいくらか」「負債の額はいくらか」の把握が必要となります。
この一つ一つの作業を正確に行わないと、遺産分割の協議や相続税の申告時に大きなリスクとなります。
当事務所では、故人の残された財産を正確に相続人の皆様へ引き継ぐサポート業務をいたします。
是非、ご相談ください。

【相続に関連する記事】

相続法等の改正のポイントのご説明

ご家族が亡くなられてからの各種お手続きのご説明

ご先祖様の名義不動産が残っている方へのアドバイス

認知症になる前に準備してほしいお手続きのご紹介

認知症を患った方の預貯金払戻しについて

亡くなれた方の預貯金を払い戻す際のアドバイス

Follow me!